
ギターメンテとユーチューブ
去年の勤労感謝の日、高校生ギタリストが練習後にギターの指板にベタベタになるまでオレンジオイルを塗り付けて、オイルが材に吸い込まれるまでゴム板の様なもので擦りまくっているのを見て、思わずそんなことしたらダメだぞ、と止めたんですが、聞くと高校生ギタリストは毎日の練習後は必ずオイル拭きをして、スタジオなどの後は特に沢山のオイルを指板に染みこませてると言うではありませんか。
はっきり言って、指板どころかネックの油漬け状態。
どうしてそんなことをする様になったのかを聞いて、嗚呼なるほどなと思ったんですが、原因はユーチューブ。
しかも毎回ギターは弾いていない時は、完全に弦を緩めてしまっていると言うので、まじで困ったユーチューブだ。
ユーチューブでは色々なメンテ法が親切丁寧に解説されていて、文字と図だけの説明に比べれば本当に分かり易いけど、でもその説明が間違っていたら、この会の様なヤバイことになってしまうわけで、ユーチューブは見る方もしっかり良し悪しを見分けないと大変なことになってしまう。
過去カナル牧野が見て目が点になったメンテ方法は、デカイハンマーでドカンドカンとナットを力まかせにブン殴ってのナット交換方法の解説。
ある程度経験のあるギタリストなら絶体マネしないだろうけど、初めてギター買いました、中古ギターでした、少しメンテ必要ですの様な初心者でしかも若い高校生中学生なら、その方法を疑いもせずに取り入れてしまうやも知れない。
別の話しでは「自己責任でして下さい」と言う配線メンテ動画を参考にした人の話しですけど、メンテ終了後アンプに繋いで弾こうとしたら、弦に触れるとビリビリ痺れて感電ギターの出来上がりで、これなんか笑う事も出来ない危ない話しだ。
責任逃れには自己責任と言うことば便利な言葉だ。
間違ったメンテ法をユーチューブに上げてる人は、悪意で人のギターが壊れたら面白いと考えてるのかも知れないし、たまたま間違った方法で壊れなかったので、親切心から動画を上げたのかも知れないが、それを見て参考にする人は他の動画と比較もして、よーく見極めをした方が良い。
ボデイー、ネックをクロス拭きするぐらいの手入れは、ギターの持ち主が適時行うだろうけど、配線弄りやフレット打ち直しになると、ヘタにユーチューブなんか参考にしないでプロにおまかせが絶体にいい。
と言っても、プロ選びも慎重にしないと、ギターを壊されることもあるから恐い。
「これは、こう言うもんだから」と言われてしまって、そうではないと言うことを証明出来る人がどれぐらいいるかですね。
もう40年ぐらい前になるけど、カナルの後輩が、フレット擦り合わせを頼んだショップがフレット交換を薦めたので、言われるがままに頼んだら、フレットの際はギザギザになってるし、ネックが弓なりに反った状態にされて「トラス利きません。買い換えですね」と言われて泣く泣くギターをやめた友達がいた。
そいつは車のローンとかあって、若いしギターまで買い換える余裕が無かったんですよ。
カナル牧野はその話しに怒って、そのショップに後輩を連れて文句を言いに行ったんですけど、リペアショップではなく小売店で、その店のバイト店員がフレット交換を薦めて、そのバイト自身がフレット交換をやったと言うからもうビックリでした。
メンテ教育を正式に受けたこともないバイトにメンテを任せる店も店だし、バイトも自分に自信があるか高飛車な対応だし、話しを付けようとしてる最中に後輩が「もういいです」なんていってしまったもんだから、交渉の甲斐なく終了でしたけど、ショップ選びも慎重にしないといけません。
ですが小売店だから駄目だと言うのではありませんし、リペア専門店でも評価できない仕事をする所はあるので、下調べは重要です。
メンテの話しではないですが、トラス調整に出したギターが数カ月も帰ってこなかった例も聞いたことがありますし、カナル牧野の知っているバンドのベーシストは、調整に出したショップがいきなり潰れて、債権者の手にベースが渡ってしまって取り返すのが大変だった言う話しも聞いたことがあります。
「ちょっとした調整やトラス回しぐらいは個人でやれ」と言うリペアマンのユーチューブも見たことがありますが、カナルの意見は賛成でも有り反対でもあるんです。
悪くとらえるのなら「下手な弄り方をして壊してくれれば、それを修理に持って来てくれれば儲かる」と言う考えだろうと言うことになるし、良くとらえるのなら、本当の親切心で「自分のギターを良く知ることで、いざと言う時の対処もスムーズに出来る様になるから、人ばかり頼らない方が良い」と言うことかも知れないけど、やっぱり自分でメンテするのなら信頼出来る情報が無ければ、手を出さない方がいいだろう。
ギタリストは演奏するのが仕事であって、リペアマンではないのだから。
